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ふるさと納税の落とし穴

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6月から新制度が開始するなど、話題になるふるさと納税ですが、
実はあまり知られていないハマりどころがあることがわかったので以下にまとめます。

事の発端は2019年度の住民税の通知でした。
通知に記載されているふるさと納税による控除額がどうみても少ない。
問い合わせてみたところ、国家ぐるみの詐欺とも言うべき
税法制度の欠陥があることが分かりました。
 


 

ふるさと納税のおさらい

ふるさと納税とは、自分の収入・控除・税額などに応じた上限を超えない範囲で、
好きな地方自治体に寄付を行うと、その寄付額のうち 2000円を除く分だけが、
当該年の所得税と翌年の住民税から減額されるという制度です。
寄付を行うと、多くの自治体では返礼品を用意しているので、
どうせ(ほぼ)同じだけ払うなら返礼品をもらえたほうがオトクということで
ここ数年で多くの人が利用するようになった制度です。
 

ふるさと納税の詳細

もう少し詳しく内訳を見てみます。

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所得税の減額

寄付額から2000円を引いた額が所得から控除されます。
この差し引かれた値に所得税の税率を掛けるので、
ふるさと納税による所得税の減額分は、(寄付額-2000)x所得税率(*) になります。
(*復興特別所得税を含む)

簡単のため復興特別所得税を無視すると、
5万円寄付を行って所得税の税率が10% なら、
(50000-2000) x0.10 = 4800円 が減税されることになります。
 

住民税の減額

住民税の減額は基本分と特例分の2つからなり、それぞれ以下のようになります。

  • 基本分:(寄付額-2000) x0.10
  • 特例分:(寄付額-2000) x(1-0.10-所得税率(*))
    (*先と同様に復興特別所得税を含む)

特例分については住民税所得割額の2割を超えない範囲という制限がありますが、
過剰に寄付を行わない限りはそれぞれ上記の値になり、
2つを合わせると、(寄付額-2000) x(1-所得税率) となります。
先の「5万円寄付, 所得税率10%」の例なら (50000-2000)x0.9 = 43200円 の減税です。

つまり所得税と住民税の減額分を合わせると (寄付額-2000) になるという訳です。
「5万円寄付, 所得税率10%」の例の場合、
減税総額は合わせて 4800+43200 = 48000 で、確かに 50000-2000 になっています。
 

ふるさと納税の説明のウソ

実は上記の説明には誤りというか、嘘が含まれています。
もちろん私が間違っていたり、嘘をついているのではありません。
執筆する際に確認した総務省のページを載せておきます。

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ウソの部分は以下です。
(原文は上記総務省の説明ページより)

住民税からの控除(特例分) = (ふるさと納税額-2,000円)×(100%-10%(基本分)-所得税の税率

上記赤線部は実際には「住民税の課税標準(所得)額を元に、所得税の算定で用いる税率表を参照して決定した割合」というべきものです。

所得税の税率表を用いているなら同じなのでは?と思われるでしょう。
しかし、「住民税」の〜額から、「所得税」の〜表を参照するという何やら不可思議なことを行っています。
ココがこの詐欺ともいうべき税法のバグの温床なのです。
 

所得税の税率の決定方法

所得税率の決定方法をざっと説明すると、
給与などの収入から、基礎控除など各種控除を差っ引いた課税所得を計算し、
その課税所得の値を元に以下の表から決定します。
国税庁のページより)

課税所得 税率
195万以下 5%
195万超え 330万以下 10%
330万超え 695万以下 20%
695万超え 900万以下 23%
900万超え 1800万以下 33%
1800万超え 4000万以下 40%
4000万以上 45%

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所得税と住民税の課税所得の違い

どういう理由/経緯か知りませんが、
課税所得に関わる各種控除のうちのいくつかは
所得税と住民税の間で異なります。
ふるさと納税で全ての方に共通する控除の中では、
基礎控除と寄附金控除(ふるさと納税)が該当します。

基礎控除は所得税が 38万円、住民税が33万円(それぞれ令和元年, 令和2年まで)、
寄附金控除は、所得税は課税所得算定時に含まれて、住民税では含まれません。

その他にも違いがあるかもしれませんが、
ポイントは2種類の "課税所得" が存在して、
所得税のものはやや安く、住民税のものはやや高くなるのです。
 

ふるさと納税、2000円を除き全額減税詐欺のカラクリ

ここまで来るとピンと来た人もいるかもしれません。

そうです。
所得税と住民税の課税所得額が、所得税率のボーダーを跨いでいるときに、
ふるさと納税の減税額がおかしなことになるのです。

例えば所得税の課税所得が334.8万だった人が、ふるさと納税を10万円行ったとします。
寄付額から2000円を引いた額が課税所得から控除されるので、課税所得は325万になります。
上記の表より所得税率は10%です。
この場合、住民税の課税所得は少なくとも基礎控除とふるさと納税の差分だけ多い、
325+(38-33)+(10-0.2) = 339.8万円以上になります。
この額面を使って同じく上記の表を参照すると見かけの "所得税率" は 20% になります。
冒頭のふるさと納税の減税の詳細に戻って計算すると、
2つの異なる "所得税率" が登場することで、所得税と住民税で所得税率の項が相殺できず、
この差分の 10%(復興税を除く)が減税されないことなります。

今回の例では(復興税を省略)、
所得税の減税額は (100000-2000) x0.1 = 9800、
住民税の減税額は (100000-2000) x(1-0.2) = 78400、
減税額の総額は 9800+78400 = 88200、
総務省の謳う減税額との違いは、(100000-2000) -88200 = 9800円。

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この実態を私が詐欺的だと言うのは、
各自治体が実際の所得税率を知らない/分からないからこのようになっているのではなく、
上記の場合、所得税率が10%であること、
その根拠の各種収入や控除も全て把握しておきながらもなお、
敢えて独自の異なる課税所得を用いて偽りの "所得税率" を用いているからです。
もちろん各自治体が好き勝手に暴走している訳ではなく、彼らは地方税法に縛られており、
これに則って処理を行っているので、おかしいのは税法制度やそれを司る国です。
しかも、総務省関連局に問い合わせてみると、
ふるさと納税を設計した時点で既にこの問題は認識されており、
それでも敢えて放置しているというのだから尚の事です。
 

税法のバグともいうべきこの実態への対応策は?

正直にいうと、明確な対処法はありません。
給与収入以外に収入がある、あるいは自営業など、
収入や控除に多少の自由度がある方は、
所得税率のボーダーに近い時は独自の対策を検討することくらいでしょうか。
特に税率のトビが大きい、課税標準が 330万, 或いは900万弱の人などは。

上記の例で、仮に9800円が減税に回らないと言って、
寄付金を1万円減らしてもあまり意味がありません。
減税額は期待値より 8800円少ないままあまり変わりません。
この最後の1万分の寄付金は、
満額とはいかないまでも、90%は実際に減税になるので、
返礼品が30%相当までであることを考えると、なおするほうがトクなのです。

所得税率のボーダーに近く、収入や控除に調整が効かない場合は、
ふるさと納税をする段階で、減税額がやや少なくなることを覚悟しておくほかありません。
 

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